新春特別企画2013 Vol.1 フランスの作曲家たち

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アルカン
シャルル・ヴァランタン・アルカン Charles Valentin Alkan (1813-1888)…生誕200年
フランスのピアニスト、作曲家。敬虔なユダヤ教徒の両親のもとパリに生まれる。6歳でパリ音楽院に入学、7歳でソルフェージュ・作曲・ピアノ・オルガンの各科で1等賞を獲得。 10代にして師ジョゼフ・ジメルマンの助手を務めるほどの神童だった。ショパン、リスト、ドラクロワ、ユゴーらと親交を結び、精力的な活動で当代随一のピアニスト兼作曲家として名声を確立するが、 1848年ジメルマンの後任を選ぶ音楽院教授選挙に敗れ、以降ほとんど公開の場に姿を見せなくなった。 作品の多くはピアノ曲で、演奏不可能なほどの超絶技巧と斬新で特異な音楽語法が特徴。代表作に「鉄道」、 「すべての長調による12の練習曲」、「すべての短調による12の練習曲」、大ソナタ「4つの時代」など。
19世紀のパリに綺羅星のごとく出現したヴィルトゥオーゾピアニストたち、その中でも一際異彩を放っているのがアルカンです。 そもそも「アルカン」は本名ではなく父親のファーストネームの借用、というところから始まって、高貴な女性との間に私生児を設けて謹慎生活を送っていたとか、 隠遁の間に宗教書の研究に没頭したとか、最期は倒れた本棚の下敷きになって亡くなったとか、とにかく謎めいた伝説がたくさん語られています。 作品も怪物のような超難曲ばかりで、こちらもなかなか人を寄せつけないのですが、ここ数十年、腕の立つピアニストたちによって再評価が急速に進んでいます。 アルカンが単なる技巧一辺倒の奇人でなかったことは、ここでお聴きいただくメランコリックな小品からもおわかりいただけることでしょう。
play アルカン:過ぎ去った時 作品31-14 [1:09] 詳細情報

ピエルネ
ガブリエル・ピエルネ Gabriel Pierné (1863-1937)…生誕150年
フランスの作曲家、指揮者。パリ音楽院でフランクにオルガンを、マスネに作曲を学び、1882年ローマ大賞を獲得。 1890年に没したフランクの後任としてサン・クロティルド大聖堂のオルガニストに就任。1910年からは23年間にわたりコロンヌ管弦楽団の首席指揮者を務めた。 甘美なロマンティシズムと印象主義的な色彩感を折衷させた作風で、代表作にオラトリオ「少年十字軍」、歌劇「魔法の杯」、 サクソフォン四重奏のための「民謡風ロンドによる序奏と変奏」など。小品「鉛の兵隊の行進曲」の作曲者としても知られている。
ピエルネといえば、作曲家としてよりも指揮者としてその名が広く知られています。コロンヌ管弦楽団の指揮者として初演した作品には、 ドビュッシーの「イベリア」や「映像」、ラヴェルの「ツィガーヌ」「ダフニスとクロエ第1組曲」など、同時代のフランス音楽の傑作をはじめ、 ストラヴィンスキーの「火の鳥」までもが含まれています。伝統的な作曲技法を習得していながらも、こうした最先端の音楽から多くを吸収していったのでしょう。 今回ご紹介する「ポール・デュカスの名による前奏曲」は晩年の作品の1つで、作曲家デュカスの死を悼んで書かれました。 PAUL DUKASのアルファベットを音に置き換え、その音列が変奏されていく静かでもの悲しげな小品です。
play ピエルネ:ポール・デュカスの名による前奏曲 [2:35] 詳細情報

プーランク
フランシス・プーランク Francis Poulenc (1899-1963)…没後50年
フランスの作曲家。母親からピアノの手ほどきを受け、15歳でスペインの大ピアニスト、リカルド・ヴィニェスに師事。 その紹介でオーリック、サティ、ラヴェルらと知己を得、オーリック、オネゲル、ミヨーらとともに「フランス6人組」の一員として知られるようになる。 実業家の父の反対でパリ音楽院には進学せず、プライヴェートでケクランに作曲を師事。 1924年、ディアギレフの委嘱によるバレエ「牝鹿」がロシア・バレエ団により初演され大成功を収める。 以降ピアノ曲、歌曲を中心に大量の作品を書く一方、ピアニストとしても精力的に活動した。 作風は明快で軽妙、ときに人を食ったようなユーモラスなものと、シリアスで敬虔な宗教性を湛えたものに二分される。 代表作に歌劇「ティレジアスの乳房」「カルメル会修道女の対話」、合唱曲「スターバト・マーテル」、ピアノのための「15の即興曲」「ナゼルの夜会」、晩年に書かれた多数の二重奏ソナタなど。
フランス音楽を語るときに必ず言及される言葉、「エスプリ」。直訳すればspirit、精神のことですが、フランス語のespritにはそれだけではない、複雑な意味合いが含まれていると言われます。 数多くのフランス人作曲家の中で、最もエスプリに富んだ作風を持つのが、おそらくこのプーランクでしょう。 私が思うに、とりわけプーランクが卓越しているのは「曲の終わり方」です。どんなタイミングで、どんな響きで、どんな印象を残して曲を閉じるのか。 聴き手の意表を突くこともたびたびですが、よく考えれば「これ以上はない」と思われる最適な終止を、プーランクは不思議といつも譜面に書き取っています。 今回お聴きいただくのは晩年の作品、2台ピアノのための「エレジー」。友人ポリニャック夫人の追悼のために書かれたこの曲には、プーランクの静謐で叙情的な側面が現れています。 今年3月にブルッフの珍品「2台ピアノのための協奏曲」で久々の共演が実現する、山本貴志君とのデュオでお聴き下さい。
play プーランク:エレジー(2台のピアノのための) [7:34] 〈第2ピアノ:山本貴志〉 詳細情報
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