曲目解説  Program Notes

シチェドリン:2つのポリフォニックな小品

 ソヴィエト体制派の作曲家ロディオン・コンスタンティノヴィチ・シチェドリンは、社会主義レアリズム全盛期にソヴィエト作曲家同盟議長を務めた経歴を持ち、 ジャズのイディオムを採り入れた、ポピュラリティーに富んだ作風で知られている。バレエ界の名プリマドンナ、マヤ・プリセツカヤ(1925- )は彼の妻であり、 バレエ音楽「せむしの子馬」(1955)など舞台作品に代表作が多い。
 「2つのポリフォニックな小品」は1961年に作曲され、モスクワ音楽院のピアノの恩師ヤコフ・フリエール(1912-1977)に献呈された。 第1曲「2声のインヴェンション」は右手に提示されるヘ短調の主題に左手のスタッカートが寄り添いながら展開されるが、後半主題が左手に移り、 突如として右手に急速な下降音型が挿入される。このパッセージは終結部で再登場し、謎めいた雰囲気を残す。 第2曲「バッソ・オスティナート」は低弦のピツィカートを思わせるバスのオスティナート(執拗反復)の上にジャズ風の即興的な旋律が奏される主部と、 機械的な同型反復が特徴的な2つのエピソードから成るロンド形式。ワイルドな曲想と演奏効果の高さから、最近ではリサイタルや国際コンクールで頻繁に演奏される人気曲である。
(2007年3月27日「展覧会の絵〜ロシアの作曲家の作品を集めて〜」プログラムに寄せて)
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