曲目解説  Program Notes

シューベルト:ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ 第3番 ト短調 D408 作品137-3

 「ソナチネ」(小さなソナタ)と呼ばれている3つの小規模なヴァイオリン・ソナタは1816年、シューベルトが19歳の年に作曲された。 同年から翌年にかけて、ヴァイオリンとピアノのための二重奏曲(「デュオ・ソナタ」)やヴァイオリンと管弦楽のための協奏的作品が書かれており、 そのいくつかは、ヴァイオリンを得意とした次兄フェルディナントのための作品といわれている。「ソナチネ」も、フェルディナントか、あるいは誰か友人のために書かれたと考えられ、 2つの楽器間の親密なダイアログが特徴的である。兄弟の中で最もシューベルトと仲が良かったフェルディナントは、弟の死後その遺稿の整理と発表に尽力し、 この「ソナチネ」も1836年にフェルディナントの手で出版に至った。
 曲集の最後に置かれたト短調のソナチネは、付点リズムを伴う決然たるユニゾンで劇的に幕を開ける第1楽章、繊細で柔和な楽想の第2楽章、スケルツォ風の快活なメヌエット、 気まぐれな表情を見せるフィナーレの4つの楽章からなる。
(2012年9月21日「弓新&佐藤卓史 デュオリサイタル」プログラムに寄せて)
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