曲目解説  Program Notes

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第12番 変イ長調 作品26

 楽聖ベートーヴェンの32曲のピアノ・ソナタを3つのグループに分けるとき、「中期」の最初の作品として挙げられるのが1801年に完成した第12番である。 ソナタ形式の楽章を持たない変則的な楽章構成が新しい特徴で、これ以降ベートーヴェンのソナタは実験的な色合いが濃くなっていく。 なお第3楽章に「葬送行進曲」を持つことから「葬送ソナタ」と呼ばれることもあり、ショパンのソナタ第2番の創作上のモデルになったとも考えられている。
 第1楽章は変奏曲形式。穏やかで宗教的とも言える主題に続き、5つの変奏が繰り広げられる。第2楽章は活発なスケルツォ。「月光」ソナタの第2楽章を思わせる。 第3楽章は「ある英雄の死を悼む葬送行進曲」と題された、重々しく威厳に満ちた楽章で、「英雄交響曲」の第2楽章「葬送行進曲」の先駆けとも言える。 フィナーレは一転して無窮動的性格を持つロンドで、最後は消え入るように終わる。
(2004年10月27日「佐藤卓史 2時間ピアノコンサート」プログラムに寄せて)
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